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あなたの知らない川柳の世界 句会レポート

ページ番号 996-807-125

最終更新日 2023年4月7日

幅広い世代が川柳の奥深さを実感

 保谷駅前公民館が主催した趣味講座『あなたの知らない川柳の世界』。2023年2月19日から3月19日にかけて、保谷駅前公民館にて隔週で全3回行われました。
 講座には20代から70代の11人が参加。むかしからいまに続く川柳文化の概説、鑑賞や作句のポイント、川柳を発表したり鑑賞したりする多様な形式・方法について、新進気鋭の川柳作家・暮田真名さんの豊富な出典や知見にふれながら学ぶ内容が参加者に好評でした。

あなたの知らない川柳の世界 講義の様子

川柳を楽しむ 句会レポート

 講座の最終回には、句会をしました。参加者は1人につき1句ずつ短冊に書いた川柳を無記名で提出し、主宰(親、仕切り役)がすべての句を一覧にして掲示・配布などによって共有します。
 共有した一覧の中からすべての参加者が各自3句を選び(自句を除く)、そのうち1句を特選とします。各自の選定が済んだら、選定結果を挙手で集計します。
 票が多く集まった句から順に、その句の選者となった参加者が中心になって講評を述べます。投句者と選句者が相互する、互選と呼ぶ方法です。
 ここで、参加者が投稿した実際の句を紹介します。
 

一.ぽいことが大事なんだよ川柳は
二.しゃべる親からもらった身体
三.流血で僕の成分ららららら
四.無気力の果てにちいさな川魚
五.かなづちにとっては辛い人の海
六.吾子ばかりかわいがるなと孤児のつぶやき
七.囲碁ドリルなぜはためいたのか
八.高架下にショップがあってうらやましい
九.その他々々々々々々々々々牛げっぷ

投稿の短冊

 いかがでしょうか。よろしければ、あなたも3つの句を選び、うち1つを特選としてみてください。それでは以下に、選・特選数と参加者の寸評を紹介します。

選・特選数一覧

一.ぽいことが大事なんだよ川柳は(選2)
二.しゃべる親からもらった身体(選3)
三.流血で僕の成分ららららら(選5)
四.無気力の果てにちいさな川魚(特選5、選3)
五.かなづちにとっては辛い人の海(選1)
六.吾子ばかりかわいがるなと孤児のつぶやき
七.囲碁ドリルなぜはためいたのか(特選2、選1)
八.高架下にショップがあってうらやましい(選1)
九.その他々々々々々々々々々牛げっぷ(特選1、選3)

参加者の寸評、コメント

四.無気力の果てにちいさな川魚

 参加者評「抽象から具体に着地」「対比がおもしろい」「いろんな世界、景色が見える」「五・七・五を尊重」「感覚的にしっくり来た」「対比が面白い」

 作者「深く読んで下さり嬉しい」(花江なのは)

 

九.その他々々々々々々々々々牛げっぷ

 参加者評「“他々…”の連なり、“げっぷ” なぜ?の面白み」「漫符のよう」「反芻のあらわれ、文字の視覚的な訴え」

 作者「この講座ならではの句になった」(あらい・ぐま)

 

三.流血で僕の成分ららららら 

 参加者評「オノマトペ系。ひらがなの連なりが縦線ベース、流血感」「視覚、音程の面白さ」「シュール」

 作者「“ら”を習字で書いたら血が出ているみたい、漫画の音みたいに出てるかな、と」(M)

 

七.囲碁ドリルなぜはためいたのか

 参加者評「なぜ“囲碁”? 白黒つけがたい」「ひなたぼっこのイメージ。実はホラー?(っぽくも感じる)」「七・七の句。“囲碁ドリル”は紙か本か。“めくれる”でなく“はためく”。問いが面白い」

 作者「自分の本棚の写真を撮って、作句の題材とした。実際の“囲碁ドリル”は人から頂いた本。“はためいた”は音程的に発想。疑問文にして想像の広がりを図った」(太田愛)

 

二.しゃべる親からもらった身体

 参加者評「“親からもらった身体”にドキッとする」「スッと入った」「霊媒師じゃないけど…しゃべるのは(親から身体をもらった)自分」

 作者「“親からもらった身体” 慣用表現に着目して作った」(暮田真名)

 

一.ぽいことが大事なんだよ川柳は

 参加者評「アンチテーゼコメントを投げ込んだ面白み」「直球で受けて返すのでなくナナメからのかるみ、アイロニー」

 作者「おっしゃる通り」(あげお)

 

五.かなづちにとっては辛い人の海

 参加者評「古典の王道と思った」

 作者「人が苦手なタイプなので、僕にとって“人”が海」(長澤洋平)

 

八.高架下にショップがあってうらやましい

 参加者評「ちょっと栄えた駅がうらやましい、わかりみ」

 作者「武蔵小金井から東小金井あたりの事務所やおしゃれなショップから発想した」(松本誠司)

 
六.吾子ばかりかわいがるなと孤児のつぶやき

 参加者評「五・七・七の長さに気持ちの鬱屈が出ている。孤児に着目した独特の視点がある」

 作者(山口あずさ)

 

 いかがでしたか。句会の様子が少しでも伝われば幸いです。ここでご紹介した手順以外にも、多様な句会のやり方があります。

 

あなたの知らない川柳の世界 句会の様子

参加者の投稿川柳を紹介します

 句会に出た川柳以外にも、講座での学びを活かした参加者の寄稿がありますので併せてご紹介します。
 
雑踏やインプラントの花ざかり   花江なのは
滝の音その他大勢たらしめて
絶望も膝から下は白かった
砂の城くずれる肩の荷がおりる
無気力の果てにちいさな川魚
 
囲碁ドリルなぜはためいたのか   太田愛
しあわせをお断りする囲碁ドリル
 
流血で僕の成分ららららら   M
ラムチョップ喰らわせたならすぐに寝ろ
 
学校に居場所があってこそ放課後   あらい・ぐま
その他々々々々々々々々々牛げっぷ
ねんざしても百虫
 
ニコニコと笑顔ふりまく守銭奴です   山口あずさ
 
無気力の森を抜け出る夜明け前   松本誠司
鮮やかに青空の下青看板
高架下にショップがあってうらやましい
 
ぽいことが大事なんだよ川柳は   あげお
無気力を往来しつつ文学性
猫子猫一笑百媚の本格派
喘息で充電切れで嘆息で
その他っていうけどきみは曼珠沙華
 
万人に夜空の月が照らしている   長澤洋平
昨日今日何もない日々ありがたい
人と人空と雲とで通じ合い
昨日がどんな日であれ日は昇る
かなづちにとっては辛い人の海
 
暖かく湿った気持ちになってみる   土屋晴文
スズメの子なんて見たことないけどね
 

参加者の感想を紹介します

「川柳の思考法は今まで自分になかったものばかりでとてもおもしろかったです! はじめての句会も楽しかったです」
「句会の互選がいい体験だった」
「小学校の授業以来の作品作りをすることが出来ました。西東京市として、このような講座を主催・開催されることに意義が大きいと思いました。参加して良かったです」
「人に伝えるツールとしての言葉はもちろん必要ですが、 予定調和などではなく言葉にしかできないことは何だろうと深く考えました」
「一番印象的だったことは“その句を裏で支える規範があるか”を考えているという点です。暮田さん(講師)が、作句のうえで裏の規範について考えていると知り、深い思索の中で作られた句に更に興味が湧きました」

講師

暮田真名

1997年生まれ。西東京市出身。「川柳句会こんとん」主宰。「当たり」同人、「川柳スパイラル」会員。句集『補遺』『ぺら』『当たり』(私家版)。『はじめまして現代川柳』(2020年、書肆侃侃房)入集。単著『ふりょの星』(2022年、左右社)。早稲田大学大学院修士課程で川柳を研究。作家として多様なメディアで幅広く活動。

インタビュー記事『西東京市出身、新進気鋭の川柳作家 暮田真名さんに聞く、現代川柳の世界』(2022年10月1日 西東京市公民館だより第257号)

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このページは、公民館が担当しています。

柳沢公民館 〒202-0022 西東京市柳沢一丁目15番1号

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